不妊の検査について

不妊症のスクリーニング

② 超音波検査

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不妊治療における超音波の役割は非常に大きいものがあります。超音波検査なしには治療が成り立ちません。ほぼ毎回超音波検査をしています。以下順にその有用性を説明したいと思います。

初診時の検査

不妊治療を行う上で必要となってくる以下の項目を検査しています。

子宮

大きさ、位置、傾き(前屈、後屈)、内膜の厚さ、内膜ポリープがあるかどうか、子宮筋腫があるかどうかをみています。

卵巣

大きさ、位置、卵巣嚢腫があるかどうか、採卵が可能な位置にあるかどうかをみています。

卵管

卵管水腫があるかどうかをみています。

ダグラス窩

ダグラス窩とは子宮と直腸の間のスペースです。腹水が貯留しているか等をみています。

月経中の検査

月経中は他の時期では見えにくい色々な情報が得られるため度々見る事になります。

子宮

月経中は内膜ポリープや粘膜下筋腫が見えやすくなります。内膜の厚さも計測します。

卵巣

胞状卵胞の数を計測⇒胞状卵胞とは小さい卵胞のことです。年齢により見える数は異なります。多ければ多いほど卵巣年齢が若い事を示しています。体外受精を行う場合その周期の採卵数の予測になります。AMHとも相関しています。その他遺残卵胞の確認もしています。

排卵前の検査

排卵時期を卵胞計測という形で予測する事が出来ます。つまり主席卵胞のサイズを測ることでその周期の排卵日を正確に予測する事が可能になります。大体20mmで排卵する事がわかっています。 これにより性交渉をする日を指導する事をタイミング療法と呼びます。人工授精のタイミングもこれによりわかります。最大卵胞の計測の仕方ですが、2方向を図りその平均で卵胞のサイズを見ています。超音波でわかりにくい時はホルモン値も計測してさらに正確な排卵日を推定する事が可能になります。子宮内膜の厚さも計測しています。

高温相での検査

高温相には排卵したかどうか確認します。黄体化未破裂卵胞が無いか確認しています。子宮内膜の状態も確認しています。排卵前の子宮内膜はリーフパターンといって木の葉のようにみえますが、排卵後は全体が白っぽくなり排卵前とは明らかに異なってきます。こういう所見からも排卵後かどうかがわかります。内膜の厚さも確認しています。

体外受精における超音波

体外受精を行う上で超音波検査は非常に有用なツールとなっています。月経中にみてどのような排卵誘発剤をどのくらい使うかという判断をします。注射後の卵胞の発育状況を見て排卵誘発剤への反応を見る際にも使用します。採卵の際も経膣超音波下に採卵しています。胚移植の際も経腹超音波下に移植をしています。

妊娠の際の検査

胎嚢GS

妊娠5週でGSの確認:早ければ4週末、遅くても5週にはGSがみえます。GSの輪郭不明瞭、変形、妊娠週数に比べてGSが小さい際は流産の可能性を考えます。HCGが高いにもかかわらずGSが見えない場合は子宮外妊娠を疑います。

胎児心拍

早ければ5週はじめ、遅くても6週末には心拍が確認できます。心拍が確認できたら8割以上は予後が良好となります。心拍は妊娠5週に90~100bpmで始まり、9週までほぼ直線的に増加し、9週中頃に170~180bpmのピークを示し、9週以降漸減し、16週には150bpmとなります。徐脈を認めた場合流産率が高くなることが報告されており注意深い観察が必要となります。

頭臀長CRL

妊娠7~12週ではCRL(頭臀長)という胎児のサイズを測り成長を確認します。CRLは予定日の修正を行う際にも活用できます。具体的にはCRLと最終月経からの予定日が5日以上のずれがある場合は予定日の修正を行います。

絨毛膜下血腫SCH

絨毛膜下血腫とはGSに接したエコーフリースペースとして観察されるもので流産との関連性もあり、出血や腹痛などの症状がある際は安静を指示します。

多胎妊娠

多胎妊娠の診断にも有用です。妊娠初期にしか分からない多胎の種類も確認できます。

後頸部浮腫

胎児後頸部に認められる一過性の皮下浮腫を後頸部浮腫(NT:nuchaltranslucency)とよび、異常肥厚を3mm以上とする報告がおおく、ダウン症等の染色体異常児が予測されます。

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